
1、メッセージでチームの動きが変わる
チームのリーダーは、メンバーとの日々のコミュニケーションを通して、目標に向けてチームを動かしていきます。そのコミュニケーションの取り方だけでも、目標に向けた実行力は大きく変わります。
コミュニケーションの取り方はリーダーシップスタイルに応じて異なりますが、大切なのはメッセージを伝えて、メンバー自身が考えて動くことができる実行力を高めることだと考えます。もし、逐一リーダーが指示を出し、報告を受けてすべての判断をしていると、リーダーにすべての判断を委ねることになり、メンバーはその指示を待つことになります。日々状況が変わるビジネスの世界で、お客様やパートナー企業と、メンバーを通してこのようなやり取りをしていればビジネスの機会を逃してしまいます。
良いメッセージは、メンバーに明確な目標と判断基準を与えます。そして、チームに「今やること」を動機付けます。良いメッセージをリーダーが発信することで、チームは全力で目標に向かい、状況に応じた判断をしながら前へ進んで行きます。
2、チームを動かせないリーダーたち
リーダーには、多くの情報が日々届けられます。達成度を確認するためのKPI、チームの活動を把握するための報告、日々の業務における問題、お客様からのリクエスト、競合他社や市場の動向そして、チームを成長させるための最新理論。リーダーにとっては、すべての情報がチームを動かすために必要な情報でしょう。
組織改革の現場でよく見かけるのが、チームを動かすための情報をメンバーにそのまま伝えているケースです。上述のような情報を聞き続けた後のメンバーはどう思うでしょうか?
「あー、話が長かったー」とメンバー同士で苦笑いしていることでしょう。このような状況の後にチームの動きが変わることはありません。
他にも、流行りの言葉のようにころころとメッセージを変えるリーダー、メンバーに理解できない言葉を並べて自己満足しているリーダー、突拍子もないアイデアを披露して優越感に浸るリーダー、言っていることとやっていることが一致しないリーダー、どれもメンバーには理解し難く、そのリーダーはチームを動かすことはできていません。
コミュニケーションとは、相手に「伝わる」ことで成り立ちます。伝えるためには、相手のことを考えて、自分の想いを理解しやすいメッセージにしなければなりません。同じメッセージを伝えるにも、経営会議メンバーに対するものと現場をリードする管理職に対するものは異なるものになるはずです。なぜなら、理解をするための前提となる知識・経験や日々流れてくる情報が異なるからです。
3、伝わるメッセージをつくろう
リーダーの頭の中には多くの情報と共に多くの取り組みたいことがあると思います。これらの取り組みを具体的に進めていくためにチームにどんなメッセージを伝えれば良いでしょうか。最も避けなければならないのは、前述したように思いついた取り組みをそのまま発信することです。
では、伝わるメッセージにするためには何に気を付ければ良いのでしょうか。筆者が組織改革の現場でリーダーが発信するメッセージを検討する際に実践していることは、
① 取り組みたいことをすべて書き出す
② 書き出した内容の関係性を考えて優先順位をつける
③ なぜその優先順位なのか理由を書く
④ まず着手する取り組みを決めて「今やること」を明確にする。
⑤ 「なぜ今着手するのか」、「なぜ今ならできるのか」を考える
⑥ 伝える相手をイメージして⑤の内容を理解できるか想像してみる
⑦ ⑤-⑥を繰り返す(信頼できるメンバーがいれば、意見を聞いてみるのも良い)
このように、メンバーにとって「今やること」に集中して具体的なメッセージになっているかどうかが「伝わる」メッセージにするためのポイントになります。
4、メッセージでチームを自走させる
チームを動かすためにメッセージを通じた意識改革を行うには、伝え方も重要になります。チームへメッセージを伝える方法として、全メンバーの前でのプレゼンテーションを利用しているリーダーが多いかと思います。もちろん、この方法も伝えるための一つの方法ではありますが、チームを動かすには十分ではありません。
チーム全体にメッセージを浸透させなければチームは動き出しません。そのためにはメンバーの一人一人に共感を作り上げる必要があります。これは一度の発信でできることではありません。メッセージの伝わり方をイメージして計画的なアプローチを行う必要があります。
メッセージを浸透させるためには、誰がどのようにメンバーとコミュニケーションを行うことが効果的なのかを考える必要があります。チームに影響力のあるコアメンバーに対してはリーダー自らがしっかりと腹落ちするまで議論を尽くし伝えていきます。その後、コアメンバーから他のメンバーへとメッセージを伝えていきますが、コアメンバーによって伝わり方が異なるため、メッセージの伝わり方を確認しながら場合によってはリーダー自らが伝える機会を設ける必要があります。
リーダー自らが伝える場合には、誰かの用意した原稿ではなく、自らの意思で自らの言葉で語ることが重要になります。なぜなら、他者の言葉はメッセージとして伝わりにくく、聞いている側には想いがないことが伝わってしまうからです。魅力的なプレゼンテーションを準備するよりも、自分の言葉で語れるように練習する方がメッセージは伝わります。
お気づきのように、メッセージを浸透させるには多大な時間を要します。しかし、チームを自走させるには浸透させるだけでは充分ではありません。特に、リーダーがメッセージとは異なる発言や行動を、日々のメンバーとのコミュニケーションで行っているような場合には、誰もリーダーのメッセージを気に留めなくなります。そのような残念な状況に陥らないよう、リーダーは常に自身のメッセージを意識して発言を行うと共に、日々のコミュニケーションにおいてもメッセージの重要なキーワードを意識的に使用するなどチームの行動が変わるまで継続する必要があるのです。
リーダーが、自分の言葉で想いを語り、同じメッセージを伝え続けることで、メンバーは目標を理解し、自らの力で前へ進んでいきます。このようにしてチームは一体となり自走していきます。
5、組織変革は想いを持ち伝え続けること
リーダーのメッセージ1つを取っても組織変革は時間をかけて成し遂げていくものです。みなさんには、今一度、自分の想いがメッセージとなってチームに伝わっているのか確認していただくことをお勧めします。もし、伝わっていないと感じるようであれば、メンバーの理解力を疑うのではなく、自らの伝え方を問うてみてください。コミュニケーションは「伝える」ことが最初のステップです。メンバーの立場に立った伝え方こそチームを動かす最初のステップになることでしょう。