売れたものを売りますか?売れるものを作りますか?
~海外進出の落とし穴~

私たちが、日本企業の海外進出を支援するにあたり大切にしていることは、お客様が海外市場に対して「覚悟を持っている」ことです。海外進出をされる日本の企業と日本に進出される外国の企業を比較して、大きな違いを感じるのがこの部分です。資金面などの制約条件の違いを考慮する必要がありますが、外国企業は日本市場で成功するためにできることは何でもチャレンジする意識が高いと感じます。

■海外進出を検討する際によくある勘違い

厳しい競争にさらされている日本市場で競争するよりも海外市場の方が成功する確率が高いと安易に期待してしまう傾向があるようですが、以下のような場合には、改めて現状認識を疑ってかかることが必要と考えています:

▶日本である程度売れている商品だから、海外でも売れるはずと考える

⇒生活・文化が異なる海外では、日本人の感覚では測れないことが多くあり、日本市場での成功体験は通用しないと考えた方が良いでしょう

▶海外で代理店が見つかれば売れるはずと考える

⇒海外市場では、知名度もなく現地の既存品・サービスと競合している場合がほとんどです。差別化しないまま参入しても多くの製品・サービスの中に埋もれてしまい選ばれる機会を失うでしょう

▶市場レポートや数回の現地視察のみで成功の可能性がないと判断する

⇒日本市場の売り方で成功すると考えていた場合は、その視点で成功可否を判断しがちです。日本市場においてもトライ&エラーを繰り返してビジネスを大きくしてきたように海外市場でも詳細市場分析に基づく仮説を立てチャレンジする姿勢が必要でしょう

■海外進出は市場拡大ではなく市場開発

このようについ勘違いに陥りやすいのは、日本国内での成功体験や根拠のない期待があるからではないでしょうか。日本市場で売れたもの・サービスが海外の市場でも売れるという保証はないはずです。既存商品・サービスを提供するチャネルを増やすアプローチは、類似市場において拡大を目指す場合に有効ですが、生活・文化が異なる海外は日本とは異なる市場として捉え、現地に適したもの・サービスを作るアプローチをとる必要があります。

つまり、海外進出を、市場の拡大としてではなく市場の開発として捉えて、顧客接点を構築することが最初の重要なステップと言えます。構築した顧客接点を基盤として活かすことで、商品・サービスの魅力を伝え、フィードバックを得るための仕組みを作ることができます。そして、その仕組みを活用することで、ターゲットの顧客層へその魅力を伝え、フィードバックをインプットとして市場で売れる製品・サービスに育てていくことが可能となります。

■海外市場で売れるものを開発するために

市場開発では、顧客接点を持つために、可能な限り代理店を通じた販売ではなく、直接販売を行った方が良いでしょう。現地での販売会やテストマーケティングなどを通じて、継続的にコミュニケーションできる顧客を増やすことが容易になるからです。

また、商品・サービスの魅力を伝えていくためには、まず今の日本市場でのビジネスがどういう顧客にどのような理由で受け入れられているのかを知り、新たな市場に対して魅力を説明できるように改めて再定義する必要があります。

そして、海外市場でどのように商品・サービスとその魅力を伝えることができるか仮説を立てます。この仮説を構成する前提条件を明確にして検証できるように指標を設定することで、市場でどのように受け入れられ、販売を拡大するために何が必要なのかを分析することができるようになります。

このように海外進出では、海外市場をこれまでとは異なる市場とみなして、市場開発のアプローチをとることが肝要です。その中でも、「顧客接点」、「魅力の再定義」、「仮説検証」が成功に向けた重要なポイントとなります。

 

『生活者にメッセージが届く広告とは』

電通が発表した「2019年 日本の広告費」(※1)によると、インターネット広告費が6年連続2桁成長でテレビメディア広告費を超え、初めて2兆円越えとなりました。これらは、生活者をマス(一塊の集団)としてではなく、より細分化したターゲットとして捉えなければならなくなったことを表しています。また、昨今のコロナ禍においては、さらに生活者の情報態度の変化は流動的なものになっています。生活者ニーズの多様化によって、以前のように「多くの人が見るだろうと想定して作る広告」だけでは対応できなくなっています。 そこで、生活者にメッセージが届く広告とはどのようなものなのか、広告会社現場の視点からお話していきたいと思います。

■広告のメッセージが効果的に伝わったケース

ある食品メーカーA社では、地元の名物料理に使われる食材の販促のため、“生活者”に訴求できる広告を検討していました。料理そのもの、食材そのものは、地元に古くから存在するもので、新たな需要を喚起する方法に頭を悩ませましたが、「地元の味でおもてなし」することに徹底的にこだわった広告を展開することに決めました。実際には、この名物料理を提供する地域の飲食店約1,000店舗にポスターを掲載し、ポスターには、“地元に帰省する人たちを迎え入れるようなメッセージ”や“昔懐かしい飲食店内での店主と何気ない会話のやりとり”を盛り込みました。その結果、地元県内のお客様が多く飲食店に足を運んだだけではなく、県外のお客様の間でも大きな話題となり、遠方よりこの地元料理を食べるために旅行に訪れる方が激増しました。

ポスターには、社名以外A社商品の情報は一切載せませんでしたが、販促に大きく貢献したことは言うまでもありません。地元を愛する帰省客に「地元に帰ってきた懐かしさ」を感じていただくことから始まり、さらに多くの方々にメッセージが伝わったことで、関係者の想像を超える結果となりました。

また、ある大学Bでは、自身の大学の良さをアピールし、より多くの学生に入学していただくための広告を検討していましたが、偏差値上位校でもなく認知度が低かったため、学校説明会等の場ではどうしても、他大学の中に埋もれてしまう存在でした。そこで、自校の「おもしろさ」「ユニークさ」を伝え他校との差別化を図り、思いきった広告を作成することにしました。大学のパンフレットというと、表紙は学生の笑顔写真またはキャンパス写真ですが、奇抜なカラー一色とキャッチコピーだけの表紙にし、新聞全面広告やTVCM、交通広告など多岐にわたる各メディアに共通のデザインを一貫して使用することで、強烈なインパクトを与えイメージを刷り込みました。「他の大学とは違うことをする」ことに徹底的にこだわった結果、その年のオープンキャンパスに訪れる学生が前年度と比較にならないくらい増加しました。メディアからも「潔い広告」として取り上げられ、さらに多くの人たちに認知されることになりました。

上記は、広告を出した成果が目に見えて得られたケースですが、広告以外のビジネス活動と同等、常に狙った結果が得られるとは限りません。これくらいの成果が得られるのが最低ラインだろう、と思われる方も多いと思いますが、実際の現場では、残念なシーンをしばしば目にします。

■実際によくある広告制作の現場

以下に挙げるのは、残念なシーンの一例です。

  • 企業キャンペーンのパンフレット制作において、関連部署それぞれの意見を公平に取り込まなくてはならず、全体としてのメッセージ性がなくなる
  • YouTubeの広告を制作する際、限られた6秒間の枠に、とにかく詰め込めるだけの情報を詰め込み、本当に伝えたいことが伝わらない
  • TVコマーシャル制作において、「家族向けの親しみのあるイメージ」でデザインを進めていたつもりが、真逆とも言える「スタイリッシュなイメージ」に急遽変更となり、制作現場が迷走、大幅なリードタイムを要した結果、中途半端でわかりづらいものになる
  • “経営者は青が好きだから”“前回は青だったから今回は赤で”など、広告を出すたびに異なるイメージを与えてしまう

広告やデザインには必ず意味が含まれています。制作側の「伝えたいこと」があるはずですが、上記のような状況では、それが望んだとおりに伝わる可能性は低いと言えます。表面上のデザインを見て、声の大きい人(意思決定者)の好みや感覚だけで判断したり、逆に多くの関係者の意見を尊重し情報を詰め込んでしまうと、生活者に間違ったメッセージ(意味)を伝えてしまう危険性も持っているのです。

それにも関わらず、同じような失敗が繰り返されるのはどうしてなのでしょうか。

次回は、これらの問題がなぜ起こるのか、どうすれば解決できるのか、ご紹介したいと思います。

(※1)参考:https://www.dentsu.co.jp/news/release/2020/0311-010027.html