チームを動かすリーダーのメッセージ 

1、メッセージでチームの動きが変わる

チームのリーダーは、メンバーとの日々のコミュニケーションを通して、目標に向けてチームを動かしていきます。そのコミュニケーションの取り方だけでも、目標に向けた実行力は大きく変わります。

コミュニケーションの取り方はリーダーシップスタイルに応じて異なりますが、大切なのはメッセージを伝えて、メンバー自身が考えて動くことができる実行力を高めることだと考えます。もし、逐一リーダーが指示を出し、報告を受けてすべての判断をしていると、リーダーにすべての判断を委ねることになり、メンバーはその指示を待つことになります。日々状況が変わるビジネスの世界で、お客様やパートナー企業と、メンバーを通してこのようなやり取りをしていればビジネスの機会を逃してしまいます。

良いメッセージは、メンバーに明確な目標と判断基準を与えます。そして、チームに「今やること」を動機付けます。良いメッセージをリーダーが発信することで、チームは全力で目標に向かい、状況に応じた判断をしながら前へ進んで行きます。

2、チームを動かせないリーダーたち

リーダーには、多くの情報が日々届けられます。達成度を確認するためのKPI、チームの活動を把握するための報告、日々の業務における問題、お客様からのリクエスト、競合他社や市場の動向そして、チームを成長させるための最新理論。リーダーにとっては、すべての情報がチームを動かすために必要な情報でしょう。

組織改革の現場でよく見かけるのが、チームを動かすための情報をメンバーにそのまま伝えているケースです。上述のような情報を聞き続けた後のメンバーはどう思うでしょうか?

「あー、話が長かったー」とメンバー同士で苦笑いしていることでしょう。このような状況の後にチームの動きが変わることはありません。

他にも、流行りの言葉のようにころころとメッセージを変えるリーダー、メンバーに理解できない言葉を並べて自己満足しているリーダー、突拍子もないアイデアを披露して優越感に浸るリーダー、言っていることとやっていることが一致しないリーダー、どれもメンバーには理解し難く、そのリーダーはチームを動かすことはできていません。

コミュニケーションとは、相手に「伝わる」ことで成り立ちます。伝えるためには、相手のことを考えて、自分の想いを理解しやすいメッセージにしなければなりません。同じメッセージを伝えるにも、経営会議メンバーに対するものと現場をリードする管理職に対するものは異なるものになるはずです。なぜなら、理解をするための前提となる知識・経験や日々流れてくる情報が異なるからです。

3、伝わるメッセージをつくろう

リーダーの頭の中には多くの情報と共に多くの取り組みたいことがあると思います。これらの取り組みを具体的に進めていくためにチームにどんなメッセージを伝えれば良いでしょうか。最も避けなければならないのは、前述したように思いついた取り組みをそのまま発信することです。

では、伝わるメッセージにするためには何に気を付ければ良いのでしょうか。筆者が組織改革の現場でリーダーが発信するメッセージを検討する際に実践していることは、

① 取り組みたいことをすべて書き出す

② 書き出した内容の関係性を考えて優先順位をつける

③ なぜその優先順位なのか理由を書く

④ まず着手する取り組みを決めて「今やること」を明確にする。

⑤ 「なぜ今着手するのか」、「なぜ今ならできるのか」を考える

⑥ 伝える相手をイメージして⑤の内容を理解できるか想像してみる

⑦ ⑤-⑥を繰り返す(信頼できるメンバーがいれば、意見を聞いてみるのも良い)

このように、メンバーにとって「今やること」に集中して具体的なメッセージになっているかどうかが「伝わる」メッセージにするためのポイントになります。

4、メッセージでチームを自走させる

チームを動かすためにメッセージを通じた意識改革を行うには、伝え方も重要になります。チームへメッセージを伝える方法として、全メンバーの前でのプレゼンテーションを利用しているリーダーが多いかと思います。もちろん、この方法も伝えるための一つの方法ではありますが、チームを動かすには十分ではありません。

チーム全体にメッセージを浸透させなければチームは動き出しません。そのためにはメンバーの一人一人に共感を作り上げる必要があります。これは一度の発信でできることではありません。メッセージの伝わり方をイメージして計画的なアプローチを行う必要があります。

メッセージを浸透させるためには、誰がどのようにメンバーとコミュニケーションを行うことが効果的なのかを考える必要があります。チームに影響力のあるコアメンバーに対してはリーダー自らがしっかりと腹落ちするまで議論を尽くし伝えていきます。その後、コアメンバーから他のメンバーへとメッセージを伝えていきますが、コアメンバーによって伝わり方が異なるため、メッセージの伝わり方を確認しながら場合によってはリーダー自らが伝える機会を設ける必要があります。

リーダー自らが伝える場合には、誰かの用意した原稿ではなく、自らの意思で自らの言葉で語ることが重要になります。なぜなら、他者の言葉はメッセージとして伝わりにくく、聞いている側には想いがないことが伝わってしまうからです。魅力的なプレゼンテーションを準備するよりも、自分の言葉で語れるように練習する方がメッセージは伝わります。

お気づきのように、メッセージを浸透させるには多大な時間を要します。しかし、チームを自走させるには浸透させるだけでは充分ではありません。特に、リーダーがメッセージとは異なる発言や行動を、日々のメンバーとのコミュニケーションで行っているような場合には、誰もリーダーのメッセージを気に留めなくなります。そのような残念な状況に陥らないよう、リーダーは常に自身のメッセージを意識して発言を行うと共に、日々のコミュニケーションにおいてもメッセージの重要なキーワードを意識的に使用するなどチームの行動が変わるまで継続する必要があるのです。

リーダーが、自分の言葉で想いを語り、同じメッセージを伝え続けることで、メンバーは目標を理解し、自らの力で前へ進んでいきます。このようにしてチームは一体となり自走していきます。

5、組織変革は想いを持ち伝え続けること

リーダーのメッセージ1つを取っても組織変革は時間をかけて成し遂げていくものです。みなさんには、今一度、自分の想いがメッセージとなってチームに伝わっているのか確認していただくことをお勧めします。もし、伝わっていないと感じるようであれば、メンバーの理解力を疑うのではなく、自らの伝え方を問うてみてください。コミュニケーションは「伝える」ことが最初のステップです。メンバーの立場に立った伝え方こそチームを動かす最初のステップになることでしょう。

 

※写真はイメージです:Photo by Product School on Unsplash

売れたものを売りますか?売れるものを作りますか?
~海外進出の落とし穴~

私たちが、日本企業の海外進出を支援するにあたり大切にしていることは、お客様が海外市場に対して「覚悟を持っている」ことです。海外進出をされる日本の企業と日本に進出される外国の企業を比較して、大きな違いを感じるのがこの部分です。資金面などの制約条件の違いを考慮する必要がありますが、外国企業は日本市場で成功するためにできることは何でもチャレンジする意識が高いと感じます。

■海外進出を検討する際によくある勘違い

厳しい競争にさらされている日本市場で競争するよりも海外市場の方が成功する確率が高いと安易に期待してしまう傾向があるようですが、以下のような場合には、改めて現状認識を疑ってかかることが必要と考えています:

▶日本である程度売れている商品だから、海外でも売れるはずと考える

⇒生活・文化が異なる海外では、日本人の感覚では測れないことが多くあり、日本市場での成功体験は通用しないと考えた方が良いでしょう

▶海外で代理店が見つかれば売れるはずと考える

⇒海外市場では、知名度もなく現地の既存品・サービスと競合している場合がほとんどです。差別化しないまま参入しても多くの製品・サービスの中に埋もれてしまい選ばれる機会を失うでしょう

▶市場レポートや数回の現地視察のみで成功の可能性がないと判断する

⇒日本市場の売り方で成功すると考えていた場合は、その視点で成功可否を判断しがちです。日本市場においてもトライ&エラーを繰り返してビジネスを大きくしてきたように海外市場でも詳細市場分析に基づく仮説を立てチャレンジする姿勢が必要でしょう

■海外進出は市場拡大ではなく市場開発

このようについ勘違いに陥りやすいのは、日本国内での成功体験や根拠のない期待があるからではないでしょうか。日本市場で売れたもの・サービスが海外の市場でも売れるという保証はないはずです。既存商品・サービスを提供するチャネルを増やすアプローチは、類似市場において拡大を目指す場合に有効ですが、生活・文化が異なる海外は日本とは異なる市場として捉え、現地に適したもの・サービスを作るアプローチをとる必要があります。

つまり、海外進出を、市場の拡大としてではなく市場の開発として捉えて、顧客接点を構築することが最初の重要なステップと言えます。構築した顧客接点を基盤として活かすことで、商品・サービスの魅力を伝え、フィードバックを得るための仕組みを作ることができます。そして、その仕組みを活用することで、ターゲットの顧客層へその魅力を伝え、フィードバックをインプットとして市場で売れる製品・サービスに育てていくことが可能となります。

■海外市場で売れるものを開発するために

市場開発では、顧客接点を持つために、可能な限り代理店を通じた販売ではなく、直接販売を行った方が良いでしょう。現地での販売会やテストマーケティングなどを通じて、継続的にコミュニケーションできる顧客を増やすことが容易になるからです。

また、商品・サービスの魅力を伝えていくためには、まず今の日本市場でのビジネスがどういう顧客にどのような理由で受け入れられているのかを知り、新たな市場に対して魅力を説明できるように改めて再定義する必要があります。

そして、海外市場でどのように商品・サービスとその魅力を伝えることができるか仮説を立てます。この仮説を構成する前提条件を明確にして検証できるように指標を設定することで、市場でどのように受け入れられ、販売を拡大するために何が必要なのかを分析することができるようになります。

このように海外進出では、海外市場をこれまでとは異なる市場とみなして、市場開発のアプローチをとることが肝要です。その中でも、「顧客接点」、「魅力の再定義」、「仮説検証」が成功に向けた重要なポイントとなります。

 

ウィズコロナで日本の組織はどう変わる?(第3回/全3回)
『第3回 日本企業の新しい経営組織の形とは』

『第3回 日本企業の新しい経営組織の形とは』

『第2回 日本企業のジョブ型雇用は組織を強くするのか』にて、メンバーシップ型とジョブ型の組織の特徴を日本企業と欧米企業の違いを例として説明しました。最終回では、日本企業の特性を踏まえて、メンバーシップ型/ジョブ型を取り入れた新しい経営組織の形を考えていきます。

■現在の日本企業の経営組織

日本の多くの企業は、高度経済成長以降、製品を生産する上で工程を標準化して継続的なカイゼンを行うことで、均一化された高品質の製品を適正な価格で供給することに主眼をおいてビジネスを発展させてきました。

この目的に応じて組織は、企業理念に基づいた企業文化を育て、その文化に沿って考え行動する人材を自社で育成してきました。また、人材育成においてはOJTを中心として現場で必要な知識を学び、小集団活動を通して個人の知識を共有し、新たな知識を生み出してきました。このような組織開発の『良さ』は、組織内において高い共感が生まれること、かつ必要な知識の基盤をメンバー全員が身に着けていることが挙げられます。一方で、組織の指示を待つ文化と組織内に限定した知識を持つメンバーが生まれる傾向があります。

組織経営では、現場で経験・知識を積み上げた管理職がそれぞれの視点で意見を出し合い、多角的な視点から物事を議論した上で意思決定を行う集団の中で合意できる落としどころを探して、組織としての判断を行ってきました。このような組織経営の『良さ』は、多角的な視点で検証した実現性の高い判断を行えること、かつ意思決定を行った集団が共通認識を持っているので実行力が高くなることが挙げられます。一方で、集団での合意形成まで多大な時間と工数かかること、決定事項に対して集団での責任体制となるため責任の所在があいまいになる傾向があります。

■残すべき『良さ』と取り入れるべき『良さ』

日本企業として今後も残すべき『良さ』は、「組織内の高い共感と実行力」、「知識共有と組織の集合知」であると考えます。一方で、欧米企業のようなジョブ型の組織の『良さ』は第2回でも述べたように、「明確な役割と権限(権限移譲)による迅速な意思決定」、「個人のプロフェッショナル意識と高い専門性」です。欧米企業では、メンバーの役割と権限が明確であるためそれぞれのポジションで意思決定できること、上位者にエスカレーションすることを適切に判断することができます。したがい、作業者に求められる専門性と管理者に求められる専門性は異なり、別の職務として遂行されます。日本企業のプレイングマネジャーのような専門性があいまいな職務はあまり見かけません。また、それぞれの職務においてメンバーが個人の知識・経験を基に判断を行うため、それぞれのメンバーが高い専門性とプロフェッショナル意識を持っていて、判断の理由を問われた時に自分の意見で議論することができます。

■日本企業の新しい経営組織の形

これらの『良さ』を生かした経営組織は以下のような特徴を持つと考えられます。

◇組織のビジョン(存在意義)と個人の価値観の高い共感

メンバーは組織が目指している姿を理解し、その姿が、自分の大切にする価値観に合っていると感じている。与えられた指示に従い行動するのではなく、組織が目指す姿を実現するために自分が何をすべきか判断できる。

◇個人の専門性を掛け合わした集合知の形成

日々の業務の中で知識・経験を共有して組織の基盤となるノウハウが常に更新されている。組織を取り巻く状況が常に変化していることを意識して、その変化を敏感に感じて適応するために情報を共有し合い新しい方法を生み出している

◇役割と権限を明確にした組織デザイン

人を意識した組織を作るのではなく、役割を意識して組織をデザインし、役割を満たすために必要な権限を明確にしている。年数や業績をみてポジションを埋めるようなアプローチではなく、組織経営するために作らなければならない役割を考え、組織の状況に適さない役割を残さないように設計する。

◇社内に留まらない個人の専門性

このような経営組織を支えるメンバーは、組織の目指す方向を理解して自分の専門性をどう高めていくかを常に考えている。専門性とは、組織内で認められる知識・経験だけでなく、組織外においてもその役割を担う人材が求められる知識・経験であり、メンバーは常に自分の専門性を意識して学ぶ姿勢を持つ。

■経営組織を変革するためには

このような新しい経営組織を作るためには、「共感を生み出すコミュニケーション」、「オープンな意見交換と知識の蓄積」、「社員のプロフェッショナル意識の醸成」が必要となります。本連載のまとめとして、日本企業がジョブ型の経営組織に変革する中で意識していただきたいことをお伝えします。

◇共感を生み出すコミュニケーション

組織がメンバーに対して共感を生み出すためには、その組織の存在意義をリーダーが説明できる必要があります。ここで言う組織とは会社だけではなく、会社を構成する事業部、部、課、グループのことを指しています。社長が会社の方向性を伝える努力をするだけではなく、それぞれの部門長が自部門の会社内での役割、会社の方向性に沿った部門の在り方をメンバーに説明する機会を作り、対話を通して個人の価値観と結びつけるコミュニケーションを行う必要があります。

仮に、リーダーが会社のビジョンに共感していない場合、その部門はリーダーの価値観によって存在することになり、部門毎にバラバラな行動をとるようになります。また、この中でリーダーの価値観に合わないメンバーは例え会社のビジョンに共感していたとしてもその組織から離れる選択をするでしょう。

◇オープンな意見交換と知識の蓄積

指示型リーダーの下では、メンバーが自由な意見を伝えることが難しくなる状況を容易に想像できます。通常、顧客のニーズや業務環境などの変化については、直接その現場に接しているメンバーがいち早く気付き、アイデアを持つものです。しかし、リーダーに自由意見を言えない環境下では、変化に気づいても自分一人で対処できないと思えば、その後の行動にはつながりません。

リーダーはメンバーを環境変化のアンテナとして捉え、知識・経験が少ないメンバーに対しても担当分野の専門家としてみなして意見を求める姿勢を示す方が良いでしょう。そして、変化への対処に向けて、リーダーだけが答えを出すのではなく、組織として取り組めるようにメンバー(専門家)を集めて取り組む環境を作る必要があります。

◇社員のプロフェッショナル意識の醸成

ジョブ型の『良さ』を取り入れるために最も大切なことは「社員の意識」です。これまで、会社が育成環境を整えてOJTを通して育てた社員は、その会社でオーダーメイドされた人材になっています。知識・経験が社内に限定され、専門家としては専門性に偏りがある可能性があります。また、専門家として学ぶ姿勢は会社に依存しているかもしれません。ジョブ型の経営組織で求められる人材は専門家としてどの組織でも生かせる知識・経験を持ち、自分で考え行動できる、時には、持論を持って他の専門家と激しい議論ができる必要があります。

組織変革では、これまでの「企業に所属する人材の育成」から「一人の専門家として組織に共感して行動を行う人材の確保」へ変わる必要があります。職務定義を策定することはもちろんのこと、評価制度、採用基準など諸制度の見直しを通して社員に変わることを求めていく必要があります。

これらの変革は、個別に実施するのではなく並行して進めていく必要があります。

決して簡単な変革ではありませんが、コロナ禍をきっかけに訪れた変革のチャンスを生かし、新しい日本型の強い組織が生まれることを期待しています。

 

 

コロナ影響下でのベトナムレンタル工場市場動向の変化
『現地からの速報』

世界各国でコロナウィルス感染者の増加が続く中、ベトナムはその封じ込めに成功していて、7月までは死者ゼロ、国内感染90日間ゼロという記録を打ち立てていましたが、7月にダナンでクラスターが発生し、8月21日現在で累計の感染者数は1,007人で死者数が26人となっています。ダナンでのクラスター発生後に、ダナンを始めハノイ・ホーチミンといった大都市はバー・クラブなどの営業停止措置が取られていますが、レストランは通常通りの営業を続けています。

■コロナ禍でもベトナム工場進出は堅調

ベトナムでは3月後半から外国人の入国制限措置が取られているため、各工業団地への海外からの視察がままならず、どの工業団地も営業的には苦戦を強いられています。しかしながら、ベトナム国内の拡張案件があり、このコロナ禍の最中でもBW Industrial Development JSCでは新規の契約を数件獲得しています。主な要因としては、従来からの「米中貿易戦争」や今回のコロナ禍の影響で、中国における生産活動のデメリットやリスクが大きくなり、政治的リスクが少なく人件費が中国の約3分の1で、距離的にも中国に近く米国と良好な関係を築いているベトナムに、生産の比重を徐々に移行するという企業が増えていることがあげられます。また、先頃日本政府が発表した令和2年度補正予算案で、「海外サプライチェーン多元化等支援事業」に235億円の補助金を用意していることも、中国からベトナムへの生産移管を後押ししています。

■コロナ禍で見られる進出動向の変化

コロナ禍前は日系企業の場合は、レンタル工場に問い合わせがあるのは中小企業がほとんどで、500㎡~1,500㎡程度の小規模の工場の需要がメインでした。3,000㎡以上の工場の場合は、レンタルではなく土地を取得して自社工場を建設するというパターンが一般的でしたが、今回のコロナ禍の影響で中長期的な見通しを立てることが困難になったこともあり、リスク軽減を考慮し、3,000㎡以上の大型規模の工場でもレンタルからスタートする大手企業が増えてきました。レンタル工場の場合は3年リースからスタートでき、最悪の場合でも撤退が容易で、損失を最小限に留めることができるので、まずはレンタル工場で3~5年間操業し、ベトナムでの生産事業が軌道に乗った段階で自社工場を建設するというパターンが増え始めています。

コロナ影響下での世界各国の経済状況は未だ混乱の中にありますが、日本企業のグローバル化の歩みを止めるわけにはいきません。日本企業の進出先最有力候補であるベトナムの、今後のレンタル工場市場の動向に注目していきます。

[ご参考webサイト] BW Industrial Development JSC 

 →https://www.bwidjsc.com/ja

 

ウィズコロナで日本の組織はどう変わる?(第2回/全3回)
『第2回 日本企業のジョブ型雇用は組織を強くするのか』

『第2回 日本企業のジョブ型雇用は組織を強くするのか』

『第1回 コロナウィルス対策がもたらした組織変革の兆し』にて、コロナウィルス対策から見えてきた新しい働き方に関する議論の方向性として、“メンバーシップ型”から“ジョブ型”の組織への移行について触れました。今回は、その2つの組織がどのように違うのか、そして、日本文化を背景に持つ企業にとってどのような影響をもたらすのか考えていきます。

■日本企業と欧米企業

メンバーシップ型組織とジョブ型組織の比較について、日本企業と欧米企業の違いとして語られることがあります。では、日本企業と欧米企業は何が違うのでしょうか。

筆者は、これまで日本にある日本企業だけでなく、海外進出先での拠点設立や、欧米企業による日本企業の経営統合のプロジェクトで活動し、欧米企業の組織の一員として業務を行ったこともあります。これらの経験を通して、組織経営および働き方に対する日本企業と欧米企業の考え方の違いを肌で感じてきました。その違いについて、今回のコロナ禍、ウィズコロナ環境下で改めてフォーカスすることで、今後の組織経営へのヒントが得られるのではないかと考えています。

日本企業は、良くも悪くも組織内での調和と公平性を大切にする傾向があります。個人の意見よりも集団の協調を重視するため、極端な意思を持ったリスクを伴う判断よりも合意を得やすい判断を行いがちです。一方で、欧米企業は、一部の専門家の意見を尊重する傾向が強く、それぞれの役割から見た意見を述べ、意思決定を行う責任者が判断を行います。その判断に対して反対意見を持つメンバーがいたとしても基本的にはその決定を尊重して組織は動きます。

大まかにはこのような傾向の違いを持つ日本企業のメンバーシップ型と欧米企業のジョブ型について、もう少し詳しく見ていきましょう。

■メンバーシップ型組織の特徴

日本企業に多く見られるメンバーシップ型組織の特徴として、次のような点があげられます。

  • 多くの視点で計画を議論してリスクを抑えた実現可能性の高いものにする過程で、関係者の計画に対する共通認識を作り出し一体感を高めることで、合意した計画をスピード感を持って実行することができる。
  • 行動を起こす前に合意形成が必要となるため意思決定に時間がかかる。また、合意形成が十分でない場合に行動に責任を持たないメンバーが現れる。
  • 一部の専門家の知識・経験を生かして組織を強くするより、個人の知識・経験を共有して組織としての集合知を形成することで組織が強くなる。人材育成の視点では特定領域の専門家よりもその組織のビジネスを幅広く理解したゼネラリストを育成することに重点を置いている。
  • 組織に必要なゼネラリストを重視するあまり、組織的な人材育成に依存して個人の成長意識を持たないメンバーが現れる。

■ジョブ型組織の特徴

欧米企業に多く見られるジョブ型組織の特徴として、次のような点があげられます。

  • 役割に応じて責任と権限が明確に定義されているため、役割に応じて素早く意思決定して行動に移すことができる。
  • それぞれの役割に従って行動するため、組織としての共通認識が十分に浸透していない場合は、それぞれが場当たり的な行動を取るケースも多く、全体として統一感がなくなり、組織としてどこに進んでいるのかわからなくなる。
  • メンバーが専門性を持ち、その役割に対して当事者意識と責任感を強く持っているため、与えられた役割に対して成長意欲を持って高い生産性を発揮することができる。
  • 定義された役割があり、役割の範囲が明確なため、担当があいまいな問題が発生した場合に自ら解決に乗り出すメンバーが少なく、上位者が自ら気付いて責任者を決定するまで問題がたらい回しにされやすい。
  • 個人の専門性を発揮することが組織の成果を高めることにつながるので、個人の能力に依存して組織の力が左右されてしまう。

■日本企業はジョブ型の組織に変わることで強くなれるのか

前述したそれぞれの組織が持つ特徴から、メンバーシップ型とジョブ型の違いは、単なる雇用制度の違いではないことがわかります。リモートワーク、在宅勤務が当たり前になった最近よく見かけるニュースでは、職務定義(ジョブディスクリプション)を行い、その定義に応じて給与を設定すればジョブ型に変わることができるように誤解してしまう人も多いように感じますが、ジョブ型組織への移行は想像以上に難しいものです。この違いは組織の在り方自体を見直すほど重大な変化であり、安易に変更してしまうと、大きな混乱を招く恐れがあります。

これまでの日本企業の強みは組織知の形成と共通認識(価値観)を前提とした組織的な強さです。一方で、ジョブ型は個人の能力を組織で利用するという個の知識の集合になります。したがい、ジョブ型で組織を強くするためには個人個人が能力を上げる、もしくは能力の高い人材を採用することによる、能力の適正に応じた組織づくりが前提となります。極端に言えば、組織が人を強くするのではなく、強い人が組織を作るというアプローチで組織を再構築することになります。

果たして、ジョブ型の組織が調和と公平性を重視する日本文化を持つ企業を強くするのでしょうか。日本企業として目指すべき経営組織は欧米企業のジョブ型を真似ることではなく、良い面と悪い面を意識した新しい経営組織の形態を模索するべきなのではないでしょうか。次回は、『日本企業の新しい経営組織の形とは』をテーマに深堀していきます。

 

 

ウィズコロナで日本の組織はどう変わる?(第1回/全3回)
『第1回 コロナウィルス対策がもたらした組織変革の兆し』

コロナウィルスが日本国内でも流行し、多くの企業がその対応に苦慮しながらも懸命に組織運営をされており、ようやく第一波が落ち着き、第二波を抑えながら経営の再建に向けて動き出しました。(本稿掲載時点)本稿では、今回の感染症の流行を起点として組織に起きた環境の変化と、その影響による今後の組織の型を考えていきたいと思います。初回はコロナウィルス対策による変化、そして、第二回はこれからの組織の型として取り上げられているジョブ型雇用、最終回に日本的な企業としての新たな組織の在り方をトピックとして取り上げます。それでは、早速初回のトピックについて話を進めて行きましょう。

 

『第1回 コロナウィルス対策がもたらした組織変革の兆し』
2019年12月に中国の武漢市で報告された新型の感染症はコロナウィルス(正式名称はCOVID-19)と名付けられ、その翌月には日本国内で感染者が報告されました。そして、2月には感染が広がり始め政府が専門家会議を設置し、政府の基本方針の公表、各自治体による自粛要請へとつながり、企業は次々と変わる状況に緊急の対応を迫られました。筆者のクライアント企業においても緊急対策委員会を設置して政府・自治体の発表や関係先企業の動向を見ながら様々な対応を行いました。

■ コロナウィルス対策で企業に求められた対応
政府・自治体からは感染防止の基本的な感染対策(マスク、手洗いなど)はもとより、外出自粛協力要請が行われ、企業は極力物理的な接触を行わないような対策をとることが求められました。ある企業では、接触を減らすために以下の対策が取られました。
◇シフト制のテレワークによる出社人数の抑制(業務によっては原則テレワーク)
◇フレックスタイム制を利用した通勤時間帯を避けた時差出勤
◇原則会議はオンラインで実施として出張の禁止、外部からの訪問者受入の停止

■ コロナウィルス対策から得られた気づき
この企業と同様に、制度的な問題を内在しながらも緊急的措置として手探りで上記のような対策を実施した企業も多いのではないかと思います。LEGAREでは、テレワークを実施した企業の協力を得て従業員がこの経験をどう評価しているのかアンケートを行いました。その結果は、経営陣の想定を超えた、制度へのポジティブなフィードバックでした。オフィス勤務社員がテレワーク社員との業務を進めることに対して86%が問題ないと回答し、テレワーク社員の61%は生産性が向上したと回答、そして、クライアントやパートナー企業とのコミュニケーションにおいても90%が問題ないと回答しました。今後の制度化に向けても78%の社員が3~4割程度(週2日程度)の業務はテレワークで支障がないと回答しています。
この結果から見ると、必ずしも同じ場所に集まって仕事を進めることが最適ではなく、資料作成など作業によってはテレワークを利用して生産性を高め、オンラインコミュニケーションを活用してムダな移動時間・コストを削減できるということになります。極論すれば、社員の生産性の最も高い場所・時間に働くことが組織として最高のアウトプットが出るということになります。

■ 場所・時間に捉われない働き方を前提とした組織が直面する課題
一方で、このアンケートを“原則テレワークとした社員のみ”で見てみると異なる結果が見えてきます。生産性やオンラインコミュニケーションについては大差がないものの、物理的な接触がなくなることにより以下のような新たな問題が認識されています。
◇ちょっとした会話ができず、チーム内で現状や方向性の認識がずれるケースが増えた
◇他のメンバーがどういう状況がわからず、お互いにサポートできない/されないため孤立感を感じる
◇些細なことを電話やチャットで確認しづらく、チーム内で知識・経験を共有しにくい

■ 日本企業が得意としてきたメンバーシップ型の組織からジョブ型の組織へ
これらの問題は、この組織が情報を共有して合意形成しながら進める“メンバーシップ型”組織の問題で、その特徴である「コミュニケーションを通した共通意識が仕事を進める上でベースとなっている」ことから起きていると想定されます。その解決策として、最近よく耳にするのが“ジョブ型”と呼ばれる働き方であり、個人個人が与えられた役割にフォーカスし、その役割に必要な情報のコミュニケーションのみとすることで自立した働き方が可能になると言われています。
新しい働き方に合わせて“ジョブ型”の組織に移行すれば良いと単純に判断するのではなく、ここでは、メンバーシップ型とジョブ型の特徴を整理して、日本企業にとって今後どのような組織を作っていけば良いのか考えていきたいと思います。次回は、『日本企業のジョブ型雇用は組織を強くするのか』をテーマに深堀していきます。

 

 

『生活者にメッセージが届く広告とは』

電通が発表した「2019年 日本の広告費」(※1)によると、インターネット広告費が6年連続2桁成長でテレビメディア広告費を超え、初めて2兆円越えとなりました。これらは、生活者をマス(一塊の集団)としてではなく、より細分化したターゲットとして捉えなければならなくなったことを表しています。また、昨今のコロナ禍においては、さらに生活者の情報態度の変化は流動的なものになっています。生活者ニーズの多様化によって、以前のように「多くの人が見るだろうと想定して作る広告」だけでは対応できなくなっています。 そこで、生活者にメッセージが届く広告とはどのようなものなのか、広告会社現場の視点からお話していきたいと思います。

■広告のメッセージが効果的に伝わったケース

ある食品メーカーA社では、地元の名物料理に使われる食材の販促のため、“生活者”に訴求できる広告を検討していました。料理そのもの、食材そのものは、地元に古くから存在するもので、新たな需要を喚起する方法に頭を悩ませましたが、「地元の味でおもてなし」することに徹底的にこだわった広告を展開することに決めました。実際には、この名物料理を提供する地域の飲食店約1,000店舗にポスターを掲載し、ポスターには、“地元に帰省する人たちを迎え入れるようなメッセージ”や“昔懐かしい飲食店内での店主と何気ない会話のやりとり”を盛り込みました。その結果、地元県内のお客様が多く飲食店に足を運んだだけではなく、県外のお客様の間でも大きな話題となり、遠方よりこの地元料理を食べるために旅行に訪れる方が激増しました。

ポスターには、社名以外A社商品の情報は一切載せませんでしたが、販促に大きく貢献したことは言うまでもありません。地元を愛する帰省客に「地元に帰ってきた懐かしさ」を感じていただくことから始まり、さらに多くの方々にメッセージが伝わったことで、関係者の想像を超える結果となりました。

また、ある大学Bでは、自身の大学の良さをアピールし、より多くの学生に入学していただくための広告を検討していましたが、偏差値上位校でもなく認知度が低かったため、学校説明会等の場ではどうしても、他大学の中に埋もれてしまう存在でした。そこで、自校の「おもしろさ」「ユニークさ」を伝え他校との差別化を図り、思いきった広告を作成することにしました。大学のパンフレットというと、表紙は学生の笑顔写真またはキャンパス写真ですが、奇抜なカラー一色とキャッチコピーだけの表紙にし、新聞全面広告やTVCM、交通広告など多岐にわたる各メディアに共通のデザインを一貫して使用することで、強烈なインパクトを与えイメージを刷り込みました。「他の大学とは違うことをする」ことに徹底的にこだわった結果、その年のオープンキャンパスに訪れる学生が前年度と比較にならないくらい増加しました。メディアからも「潔い広告」として取り上げられ、さらに多くの人たちに認知されることになりました。

上記は、広告を出した成果が目に見えて得られたケースですが、広告以外のビジネス活動と同等、常に狙った結果が得られるとは限りません。これくらいの成果が得られるのが最低ラインだろう、と思われる方も多いと思いますが、実際の現場では、残念なシーンをしばしば目にします。

■実際によくある広告制作の現場

以下に挙げるのは、残念なシーンの一例です。

  • 企業キャンペーンのパンフレット制作において、関連部署それぞれの意見を公平に取り込まなくてはならず、全体としてのメッセージ性がなくなる
  • YouTubeの広告を制作する際、限られた6秒間の枠に、とにかく詰め込めるだけの情報を詰め込み、本当に伝えたいことが伝わらない
  • TVコマーシャル制作において、「家族向けの親しみのあるイメージ」でデザインを進めていたつもりが、真逆とも言える「スタイリッシュなイメージ」に急遽変更となり、制作現場が迷走、大幅なリードタイムを要した結果、中途半端でわかりづらいものになる
  • “経営者は青が好きだから”“前回は青だったから今回は赤で”など、広告を出すたびに異なるイメージを与えてしまう

広告やデザインには必ず意味が含まれています。制作側の「伝えたいこと」があるはずですが、上記のような状況では、それが望んだとおりに伝わる可能性は低いと言えます。表面上のデザインを見て、声の大きい人(意思決定者)の好みや感覚だけで判断したり、逆に多くの関係者の意見を尊重し情報を詰め込んでしまうと、生活者に間違ったメッセージ(意味)を伝えてしまう危険性も持っているのです。

それにも関わらず、同じような失敗が繰り返されるのはどうしてなのでしょうか。

次回は、これらの問題がなぜ起こるのか、どうすれば解決できるのか、ご紹介したいと思います。

(※1)参考:https://www.dentsu.co.jp/news/release/2020/0311-010027.html